2002年07月26日
UPAという学会をご存じでしょうか?Usability Professionals' Associationの名の通りユーザビリティ屋さんの集まりです。アメリカを中心とした会で、インターフェイス系でもユーザビリティに特化したものとしてはおそらく世界最大の組織だと思います。これの第11回大会が、去る2002年7月8日から12日にアメリカはフロリダ州オーランドで開催されました。参加費、飛行機代、宿泊費(会場が高級リゾートホテル)とバカにならない費用がかかりましたが、なんとか行ってまいりました。今回は、その雰囲気をお伝えしたいと思います。
まず、とにかくヒヤリングの自信を喪失して帰ってきました。スライドに沿った話はともかく、質疑とか耳だよりの部分は相当ツラかったです。日本のインターフェイス系学会と違って、質疑応答はもとより、演者が発表している最中にも質問や冗談(!)が飛び交うので、余計に大変でした。以前、参加したHCI(Human-Computer Interaction)のカンファレンスでは、こんなに白熱してかつ和気あいあいなカンジではなかった気がします。UPA特有のノリなのかも知れません。発表者、参加者ともにエンジニアよりもコンサルタントが多い分、話上手な人が多いかも。聴衆の爆笑が起きる発表が多いこと。ともあれ、その分、英語もできないと満喫できないところかと。>UPA
そんな状態だったので、全ての発表を聴けたワケでも、発表の全てを理解できたワケでもないですが、大きく感じたのは以下のような点です。
■日本とあまり変わらない現場の実情
σ(^^)達のような外部コンサルにしろ、開発セクションの内部の人間にしろ、ユーザビリティ関連の取り組みにコストをかけるようクライアントや上司を説得するのは苦労が絶えないようです。面白かったのは、招待発表で「Promoting Yourself and Usability」なんてのがあって、(ユーザビリティ屋さんではない)自己PR専門のコンサルタントを呼んできて、「自分のできる仕事、取り組みのメリットを短い文で表現してみましょう。。では、お隣の人と自己紹介の練習をしてみましょう」なんてやってたりとか。あとは、ユーザビリティの取り組みの効果測定はどうするの?といった議論もありました。これができないと人を説得することは難しいですからね。
■上流工程での要求定義を重視
製品の仕様がほぼ固まってから、試作モデルでユーザテストを実施して問題点を発見することは重要ですが、実際問題そこから修正できる部分はあまり多くないことがほとんどです。ですので最初に仕様を決めるより前に、「今、人はどうやってその問題を解決しているのか」を徹底的に調査することの重要性が注目されています。大事であるってことは随分昔から言われていましたが、具体的に調査をするための手法や、事例紹介などが紹介されたり、講習会で教えられたりしていました。まだまだユーザテストほど、誰にでも学習可能な形に落とし込まれた手法はないようですが、これだけニーズがあればいずれ誰かが成果を出してくれるでしょう。
■簡易なユーザ・テスト実施法
一方で、その価値が一般的に認められるようになってきたユーザ・テストに関しても、より簡便に実施できる手法が話し合われていたように思います。以前のコラムで紹介した本の著者、Steve Krugも電話越しで行う”激安”ユーザ・テスト法を講習会で発表していました(本にサインもらっちゃいました(^^)/)。
逆に、専門家評価、つまり実際のユーザに代わってユーザビリティの専門家が評価するといった手法はまったく話題になっていなかった気がします。やはり、専門家の確保/教育が難しい点、ユーザの生の声の方が説得力がある点などで、ユーザ・テストをする方向に流れているのかも知れませんね。
■その他
後は、懇親会でEntertainment Showとかって、ユーザ・テスト哀歌だとか「ユーザビリティ・コンサルタントになりたい10の理由」とかってオフザケ系の出し物やったりと、層の厚さを感じましたね。笑いのネタになって、それを笑える人があれだけいるってのはスゴいことだと思いました。写真はその時のものです。そうそう、参加者数は500人を越えたようなことを言ってました。やはりアメリカからがほとんどですが、その他にもかなり多くの国から参加していたようです。日本人は両手に余るくらいだったかな。
ともあれ、参加にはやたらとコストがかかるので来年(今度はアリゾナ)も参加できるかどうかはわかりませんが、世界でもっともツッコんだユーザビリティ関連の議論ができるところの1つであるのは間違いなさそうです。ご興味と上司の承認(つまりお金)と英会話スキルがお有りの方は、是非一度参加なさってみてはいかがでしょう。