2002年09月02日
皆さんは、S端子を装備した映像機器をお使いでしょうか?写真1のような形をしたコネクタです。信号ピンが4本と位置合わせ(?)の角棒が1本で構成されており、決まった向きにしか挿さらないよう工夫されています。このこと自体は制約を利用した上手いデザインと言えるのですが、残念なことに、指でつまむカバーの部分のデザインがイケていないため、使いにくくなっているものが目立ちます。
写真1. S端子のピン配列 | 写真2. 一般的なコネクタ |
写真2は典型的なS端子ケーブルのカバー部分です。メーカーのロゴのレリーフ(浮き彫り)が入っており、これが上になるように持つと中の角棒が下になり、大抵の映像機器はこの向きで挿さるようになっています(ややこしいことに、最近の三菱のS-VHSデッキなどで90度横になった端子のものもあります...)。このロゴを手がかりとしたやり方は、多くのブランドのS端子ケーブルで共通でなかなか良い工夫だと思っていました。しかし最近、これでは充分ではないと思うケースに気付いたのです。
我が家のように狭い家では、なかなかAVラックの背面と壁面に充分な間隔を置いて設置することはできず、またキャスター付きのラックなども手がでないので、配線作業の際は手だけ背面にまわして手探りで抜き差しすることになります。端子の位置も取扱説明書の背面図を睨みながら指先の感触だけで探り当てます(S端子のジャックは飛び出していない分、特に探しづらいですね)。そしてこのような状況下では、レリーフが多少浮き彫りになっている位ではなかなか正しい向きで差し込めないんです。
次に比較的レアなケースかと思いますが、暗所での作業があります。ユーザビリティ・ラボの観察室ではマジックミラー(ハーフミラー)越しに実験室を観察しているので、テスト中は照明を暗く保たなければなりません。しかし、そんな時に限って急に配線変更や追加の必要が生じます(しかもたいてい時間が逼迫しています)。また我が家ではプロジェクターを使っており、かつセレクタでは間に合わないような複雑な配線変更を比較的頻繁にします。(安物プロジェクターで表示が暗いせいもありますが(^^;))照明をつけてしまうと画面が見づらいので、配線結果の確認をしながらするには、やはり暗いまま作業をすることになります。このように、暗所での配線作業でもやはりもっとピンの向きがはっきり持ってわかるカバー形状が望まれます。
そんな中、我が家に理想的なS端子ケーブルがあるのに気付きました。すでに入手経路は定かではないんですが、たしか何かの製品に付属してきたものだったと思います(家電品ではなく、PC用のキャプチャ機器とかだったような)。それは写真3のような形状をしています。上にすべき側が完全な面になっており、これなら指先の感覚だけで正しい向きに持ち直すことが容易です。実はS端子ケーブルと同じ規格であるMacintoshのADB(USB以前のMacのキーボードやマウスを接続するポート)のコネクタはこうでしたね。平らな面にリンゴマークが入ってました。「これはイイ!」と思って同様の製品を家電店のケーブル売り場に行って探したんですが見つかりません。
写真3. 理想的なコネクタ形状の例 |
そこで、今回の道具眼ビューでは、「各社のS端子ケーブルのコネクタ形状が、触感だけで向きが把握しやすくする工夫が成されているか?」という視点で調査してみました。
ランク | 条件 |
---|---|
Aランク | 触覚で容易に向きが把握できるもの |
Bランク | ロゴのレリーフなどで一応目印はついているもの |
Cランク | まったく目印がないか、あっても余り役に立ちそうにないもの |
同一ブランドで一般向け、高級向けとクラス分けがされているケースもあるかとは思いますが、ちょっとそこまではフォローできていません。とりあえず大型家電店の店頭で外見から判断しました。「いや、これは見た目に反して結構判別できるんだよ」といった御異論があれば大歓迎です。
「形状で挿入向きが判別できるか」表
ブランド | 評価 | 備考 |
---|---|---|
Fuji Parts | B | |
Panasonic | B | |
Victor | B | |
Acoustic Research | C | |
Arvel | C | |
audio-technica | C | |
Monster | C | |
SONY | C |
なんと、Aランク該当無し!昔のMacについてたADBケーブルを使うしかないのか(カールコードだけど(^^;))。多くのメーカーはやはりレリーフのみですね。面がついているものも複数の面になっていて向きの把握には役立たないものばかりです。そして一方で見事に円柱でまったく判別不能なものも存在することがわかりました。音声ケーブルとの区別すら付きません。面白いことにそういったのは高級よりのケーブルに多かったように思います。カバーが金属なので成形が難しいせいでしょう。
先日、ついに間違った方向で無理に挿そうとして、中のピンを曲げてしまいましたので、多少高くてもランクAのものを買いたいと思います。ランクAのS端子ケーブルを作っているブランドをご存じの方は、是非ご一報下さい。