2002年12月16日
毎度、忘れた頃の道具眼コラムです。
お陰様でそれなりに日々することがあって、なかなか執筆できません。今回は今、道具眼的にやらなくちゃと思っているToDoをまとめてみます。
「それは是非読みたい!」とか「それ系ならこういうのがあるよ」とか「こうしてみたらどう?」とか、「一緒にやりましょう」といったコメント大歓迎です。
■ユーザテストのビデオサンプル
世の中、ユーザビリティ関連書籍が色々増えてきていますが、決定的に足りない と思うものがあります。それはユーザテストを見たことすらない人が初めて実施しよう とする際に概要がイメージできるようなものです。幸い考え方や個々のTipsとしては優 れたものが出回ってきています。例えば前者であれば、以 前のコラムでも紹介した「Webユーザビリティの秘訣」などが良いでしょう。後者 としては、NNGroupがWebで販売している「230 Tips and Tricks for Better usability Testing」がオススメです(現在は英語でしか読めませんが、現在某所で日本語版の準備が進められているというウワサです)。本コラムでも実践的な情報はできるだけ提供していきたいと思っています。
ただ、そういうものを寄せ集めても、そもそもユーザテストというものが実際に目にしたことない人にはイメージしにくいんじゃないかと思います。一番良いのは一度参加してみることだと思いますが、そういう機会も稀でしょう(性格上、外部の人間にテストを傍聴させてくれるケースは少ない)。被験者としての参加であればユー・アイズ・ノーバスなど一般から募っているところに応募してみるという手はあります。ただこれは地理的制約もありますし、被験者側という限られた視点からしか眺められませんので、情報量は限られます。
要するに、映像資料としてユーザテストを実施しているところを見られるといいんじゃないかなと思います。部屋のセッティングから、司会進行役の語り口調まで、映像から得られる情報ってすごく有益なんじゃないかと。なんかいきなり社内でユーザテストやってみようということになったけど、誰も経験者がいない、なんて現場では結構重宝しないですかね?
ハウツー・ビデオと呼べるシロモノにまで作り込むのは個人では難しいですが、単にイメージがつかめる程度のものなら、適当に守秘性のない対象を選んで数人で実施した場面を撮影するだけでも出来そうな気がします。
これをDVD-Rなどで配布するなり、MPEG形式にしてサイトに置いとくなりするのは簡単ですしね。
実施側の裏舞台的なところはビデオだけでは難しいかも知れません。これに関しては、現在σ(^^)もお手伝いしている母校の学部生向け演習で「ユーザテストをやってみよう」ってプロジェクトが進行中で、この成果、というか経過に関してはWebで公開したいね、ってことになっています。実際に問題点を過程してテスト計画を練って実施する、という過程に沿った実例って、なかなか公開されているものがないので、是非形にしたいと思っています。
まぁ、そんなこんなで「ユーザテストってなんとなくこんなカンジ」ってイメージがつかめるようなコンテンツがあると、これからやってみようかって人にはいいんじゃないかなということを考えています。
■ユーザテスト・ラボ設置のツボ
ユーザテストの用いる実験室、観察室を構築する上でのTips集。これから社内でラボを作るという人向けに、こんな機材を揃えると良い、とかいったノウハウを提供したいなと。例えば、道具眼ビューの最初のネタに取り上げた「DVカメラは三脚につけたままテープが交換できるものでないと不便」とかいった現場レベルの実践的な情報は整理すれば色々出てくるんじゃないかなと。
■道具眼モード再考
2年前のヒューマン・インターフェイス・シンポジウムでσ(^^)達は「道具眼」という概念について発表しました。当サイトの名称ではなく、人が道具の使いやすさを評価する時の視点に関する考察です。こちらからPDFファイルがダウンロードできます。
『道具眼:道具の使いやすさを評価する眼力−消費者の抱く「使いや
すそう さ」と実際の「使いやすさ」の関係に関する考察−』
古田一義、佐藤大輔、尾形慎哉 , 2000 , ヒューマンインタフェースシンポジウム'00
この発表では、人が道具を評価する時に、表面探索モードとシナリオ・モードという2つの視点を使い分けているのではないかと仮定しました。前者は文字通り、道具の外観を眺めて「このボタンでは何ができそう。こっちはアレに使うんだな。うん、だいたいわかりそう」という判断をするボトムアップ的視点。恐らく人はまずこういう方法で評価をすると考えられますが、目に見えているボタンやメニューからできることが推測できるだけでは、実は充分ではありません。「アレをするにはどこを操作したら良いんだろう?」というトップダウン的視点で評価するのがもうひとつのシナリオ・モードです。これをするには、その道具を使ってどういう目的が達成できるか、その為には何が必要か、を熟知していることが不可欠になります。
例えば店頭で初めて携帯電話を見た人がいたとしましょう。その人にとって、とりあえずそれは「電話をかける」道具でしかありません。表面探索モードで、「数字を押して発話ボタンでかける。終話ボタンで切れるんだな。うん、使えそうだ。」と思うかも知れません。しかし購入後、実際の利用場面では「メモリダイヤルに登録するには?」、「メールを送信するには?」、「着信音を変更するには?」といったシナリオが出てきてやっぱり使えない、ということになり得るワケです。
この件について、学会発表後放置されているのをなんとかしないともったいないかな、と思っています。
今のところ次のコラムはコレになる可能性が高いかな。目標今年中。
■メーリングリスト
現在、日本語で購読できるユーザビリティ関連のメーリングリストって、学会、研究会主催の学術的なものばかりです。もっと気軽に開発案件に関する相談ができる場所があっても良いのじゃないかなと思っています。メーカーさんなんかだと気軽に外に持ちかけられないかも知れませんが、オンラインソフトウェアなど守秘的な制約の低いモノについて、UIデザイン上の相談をもちかけたり、使いやすさ日記的なネタで盛り上がったりできれば、巷のユーザビリティに関する意識や関心を底上げできるんじゃないかな、とか。
■道具眼アンテナ
ちと自虐的な話ですが、サイトの更新が滞っており冒頭の「忘れた頃に」が洒落になってない状況です。それでも興味をもってサイトを更新チェックに定期的に訪れている方に申し訳ないので、コンテンツの更新があった時にお知らせするような自動登録のメーリング・リストのようなものを作ろうかなとか思ったり。ニーズありますかね?上記メーリングリストと兼ねてしまっても良いかも。
とまぁ、色々考えておりますが、根が怠け者なのでなかなか動きません(^^;)。オマケにどうも腱鞘炎のケが出てきていて、日によってはタイピングがツラいことも...。なんとかニーズのあるものから取り組んでいきたいと思いますので、リクエストをお寄せ下さい。